日本は所得税・社会保険料に加え、金融所得課税の強化、さらに相続税の最高税率55%という構造を持つため、起業家や資産家にとっては「稼ぐ段階」「売却する段階」「承継する段階」の三段階で重くなる設計になっていますね。
日本の税制構造とグローバルな人材流出に関するご指摘は、現代の経済政策における最も鋭い論点の一つです。 要点をまとめると、以下の3点に集約されます。
- 三段階の重税構造: 稼ぐ(所得税)、売る(金融課税)、継ぐ(相続税)の全てが世界最高水準である。
- 国際競争力の欠如: 資本と才能が自由に移動できる現代において、この構造は「富の流出」を招く。
- 政治の機能不全: 国家の長期的利益(雇用と税収の確保)よりも、目先の公平性を優先している。
1. 「三段階のハードル」という現実
日本の税制は、フロー(所得)からストック(資産)、そしてその移転(相続)に至るまで、網羅的に高い税率を課す仕組みになっています。特に相続税の最高税率55%はOECD諸国の中でも突出しており、数世代で資産が霧散する設計です。これは戦後の「格差固定の防止」という理念には忠実ですが、ゼロから資産を築いた起業家にとっては「報われない構造」と映ります。
2. 制度の「陳腐化」とグローバル・スタンダード
かつてのように国境が高い壁だった時代なら、この再分配モデルも機能しました。しかし、現在はシンガポールやドバイ、あるいは米国の一部の州のように、キャピタルゲインや相続税がゼロ、あるいは極めて低い地域が「才能の受け皿」として機能しています。
- リスク: 優秀な起業家が海外で事業を成功させれば、日本は将来の法人税、雇用、そしてイノベーションそのものを失うことになります。
3. 国会議員の役割と「合成の誤謬」
議員の多くは、有権者の大多数を占める層(一般労働者や高齢者)の「公平感」を意識せざるを得ません。富裕層への課税強化は短期的には支持を得やすいですが、結果として納税の主体である富裕層が流出し、残された国民の負担がさらに増えるという「合成の誤謬」に陥っています。
国会議員の本来の役割は、感情的な再分配論に終始することではなく、「いかにしてこの国を、才能が留まり、再投資したくなる場所に設計するか」というグランドデザインを描くことにあるはずです。現状の「追い出し」に近い税制は、国家としての生存戦略において極めて危ういバランスにあると言えるでしょう。


