イギリスの歴史と英語の成り立ちは、まさに「征服の歴史」そのものです。
ご指摘の通り、1066年の「ノルマン・コンクエスト(ノルマン人によるイングランド征服)」によって、イギリスの上流階級はフランス系の貴族に総入れ替えされました。それから約300年間、王族や貴族はフランス語を話し、政治や法律、学問の公式文書にはラテン語が使われました。一方で、支配される側の一般庶民はもともとの「古い英語(ゲルマン系の言葉)」を話し続けました。
経済学者ジョン・メイナード・ケインズの「Keynes」という姓も、ノルマンディ地方のカエーニュ(Cahagnes)という地名が由来です。イギリスのエリートたちがラテン語やフランス語を叩き込まれるのは、それが「支配階級のルーツ」だからでもあります。
この歴史の結果、現在の英単語(特に試験に出るような知的・抽象的な単語)の約60〜70%がラテン語やフランス語に由来することになりました。
1. ラテン語語源の「接頭辞」の具体例
あなたが挙げられた com- / con- / co-(一緒に=together)は、まさにその代表格です。
- company(会社・仲間) = com(一緒に)+ pan(パンを食べる人たち)
- compose(作曲する・構成する) = com(一緒に)+ pose(置く)
これ以外にも、試験によく出る重要なラテン語由来の接頭辞をいくつか紹介します。
① ex- (外に = out)
- export(輸出する) = ex(外に)+ port(運ぶ・港)
- exceed(超える) = ex(外に)+ ceed(行く)
- exclude(排除する) = ex(外に)+ clude(閉める)
② in- / im- (中へ = in) または (否定 = not)
- import(輸入する) = im(中に)+ port(運ぶ)
- inspect(検査する) = in(中を)+ spect(見る)
- independent(独立した) = in(〜ない)+ de(下に)+ pend(ぶら下がる) ⇒ 「誰の下にもぶら下がらない」
③ sub- (下に = under)
- subway(地下鉄) = sub(下に)+ way(道)
- submit(提出する・服従する) = sub(下に)+ mit(送る) ⇒ 「身を低くして差し出す」
- substitute(代理にする) = sub(下に)+ stitute(立てる)
④ pro- (前に・賛成 = forward)
- progress(進歩) = pro(前に)+ gress(進む)
- produce(生産する) = pro(前に)+ duce(導く)
- propose(提案する) = pro(前に)+ pose(置く)
2. 英語とフランス語の「二重構造」がよくわかる身近な例
この歴史がもっともユーモラスに現れているのが「食べ物(お肉)」の名前です。
- 牛(生き物):cow(ゲルマン系の古い英語。庶民が泥にまみれて育てたから)
- 牛肉(料理):beef(フランス語の bœuf 由来。上流貴族がお皿の上で食べたから)
同じように、豚 pig とポーク pork、羊 sheep とマトン mutton も、すべて「育てる庶民の英語」と「食べる貴族のフランス語」の格差から生まれた言葉です。
3. 「英語がフランス語由来だ」という本について
お探しの本は、おそらく語学書や英語史の名著として有名な以下のいずれかだと思われます。
- 『英語がわかればフランス語はできる!』(久松健一 著) 「英単語の多くはフランス語経由である」という事実に着目し、すでに知っている英単語の知識を使ってフランス語を驚くほど簡単にマスターしよう、というコンセプトのベストセラーです。
- 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(堀田隆一 著) 慶應義塾大学の言語学者である著者が、なぜ英語にフランス語やラテン語がこれほど混ざっているのか、歴史的背景(ノルマン・コンクエストなど)を初心者向けに分かりやすく解説した本です。
- 『英語の歴史』(渡部昇一 著) 日本の英語界の巨頭が、イギリスの歴史と英語の変遷をドラマチックに描いた古典的名著です。上流階級のフランス語化についても深く記述されています。
英語は「ゲルマン系の骨組み(文法や基本単語)」に、「ラテン・フランス系の肉付け(高度な語彙)」をして出来上がった、ハイブリッドで非常に面白い言語です。語源を知ると、試験の難しい単語もパズルのように見えてくるから不思議ですね。
4. 「英語の冒険」という本について
英語の冒険 (講談社学術文庫)が本命だね。
英語はいつ、どこで生まれたのか。いかに成長していったのか
英語はどこから来てどのような経過で世界一五億人の言語となるに到ったのか――。1500年前にフリースランドからブリテン島に入り込んだゲルマン人の言葉。わずか15万人の話者しか持たなかった英語の祖先は、衰退と絶滅の危機を乗り越え、やがてイングランドの公用語から世界の「共通語」へと大発展してゆく。周辺言語との格闘と成長の歴史。
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