マクガバンレポートの衝撃
マクガバンレポートは、1970年代後半にアメリカ合衆国上院特別栄養委員会が公表した画期的な報告書です。この報告書は、委員長ジョージ・マクガバンの名前にちなんで「マクガバン・レポート」と呼ばれています。
レポートの背景と目的
マクガバンレポートは、当時のアメリカの食生活と健康状態に対する深刻な懸念から生まれました。1970年代前半、フォード大統領が「アメリカの国家予算の莫大なお金を進歩したと言われるアメリカ医療に投じているにも関わらず、何故病人が増えていくのか?」という疑問を抱き、マクガバンに徹底的な調査を命じたことがきっかけとなりました。
レポートの主な内容
マクガバンレポートは、以下のような重要な指摘と提言を行いました:
- 食生活の問題点:アメリカの典型的な食事(ハンバーガー、ステーキ、アイスクリーム、炭酸飲料など)が健康に悪影響を及ぼしていると警告しました。
- 食源病の概念:がん、心臓病、脳卒中などの疾患を「食源病」と位置づけ、これらは食生活の改善なしには解決できないと主張しました3。
- 具体的な改善目標:レポートは、アメリカ人に対して以下のような食生活の改善を提案しました:
- 飽和脂肪の摂取を総カロリーの10%以下に抑える
- 1日のコレステロール摂取量を300ミリグラム以下に抑える
- 肉の消費を減らし、鶏肉や魚の消費を増やす
- 予防医学の重要性:食生活の改善が、がんや心臓病、糖尿病などの発症率と死亡率を大幅に減少させる可能性があると指摘しました3。
レポートの影響と反響
マクガバンレポートの公表は、アメリカ社会に大きな衝撃を与えました。しかし、その内容はアメリカ医学会や全米畜産協会など多くの企業団体からの批判を受け、マクガバン自身も政治の舞台から姿を消すことになりました。
一方で、このレポートをきっかけに、アメリカ政府は1979年から医学以外の分野、特に食材、栄養、サプリメント、東洋医学などの補完代替医療に注目するようになりました。その結果、1990年を境に、アメリカのがん患者数および死亡数が減少に転じるという成果が見られました。
日本への示唆
日本の伝統的な食生活(米、魚、野菜、豆腐などの大豆製品、海藻を中心としたバランスの良い食事)は、マクガバンレポートの推奨する食事内容と多くの点で一致しています。しかし、近年の日本人の食生活の西洋化に伴い、マクガバンレポートが指摘するような食源病の増加が問題となっています。
マクガバンレポートは、食生活の改善が健康に大きな影響を与えることを強調し、現代の食育や健康政策に大きな影響を与えた重要な文書として位置づけられています。