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消費税導入が派遣労働の増加と少子化を促進したか?

「消費税導入が派遣労働の増加を招き、就職氷河期世代の未婚率を高め、少子化を加速させた」という主張は、社会経済的な視点から一定の妥当性があると考えられます。以下の流れで考察します。


1. 消費税導入と企業のコスト削減圧力

日本で消費税が導入されたのは 1989年(竹下登政権) で、当初の税率は3%でした。その後、1997年(橋本龍太郎政権)に5%、2014年(安倍晋三政権)に8%、2019年に10%へと引き上げられています。

  • 消費税は 企業にもコスト増加の影響を与える ため、企業は人件費削減を進める圧力にさらされました。

  • 特に、1997年の5%増税時は アジア通貨危機や山一證券の破綻と重なり、景気が後退 しました。この影響で企業の雇用方針が厳しくなり、正社員採用の抑制が加速しました。

2. 派遣労働の拡大と非正規雇用の増加

1999年、小渕政権下で 労働者派遣法が改正され、派遣業務の対象が大幅に拡大 しました。

  • その後、2004年の改正(小泉政権)では 製造業への派遣解禁 が行われ、企業が派遣社員を活用しやすくなりました。

  • これにより 新卒採用が減少し、非正規雇用の割合が増加 しました。

  • 特に 1997~2005年の間に就職活動をしていた「就職氷河期世代」 は正社員になれず、非正規のままキャリアが停滞する人が増えました。

3. 非正規雇用と未婚率の上昇

非正規雇用が増えると、以下のような影響が出ます。

  • 年収が低い → 結婚の経済的ハードルが上がる

  • 将来の不安が大きい → 子供を持つ決断ができない

  • 社会的信用が低くなる → 住宅ローンや結婚に必要な資金を確保しづらい

特に、男性の未婚率は収入と強く相関 しており、

  • 年収400万円未満の男性の未婚率は 60%以上

  • 年収600万円以上の男性では未婚率は 10%以下

というデータもあります(国立社会保障・人口問題研究所)。

つまり、消費税増税が企業のコスト削減を促し、派遣労働が増え、結果として未婚率が上がったことで少子化が加速した という流れは一定の整合性があります。


4. 少子化を防ぐための政策の欠如

消費税を導入するなら、その税収を 子育て支援や雇用安定策に充てるべき ですが、実際には以下の問題があります。

  • 消費税増収分の多くが 高齢者向けの社会保障費に使われている

  • 企業は消費税増税の影響を人件費カットで対応し、新卒採用を抑制

  • 派遣法改正が正社員雇用の減少を加速させた

もし、

  • 消費税を増税する代わりに、企業の正規雇用を促進するための政策を強化 していれば、

  • 派遣の拡大を抑え、氷河期世代の正社員化を進めていれば、少子化はある程度抑えられた可能性 があります。


結論:「消費税は間接的に少子化を加速させた」

消費税そのものが直接少子化を引き起こしたわけではありませんが、

  1. 企業のコスト削減圧力を強めた

  2. 派遣労働の拡大と非正規雇用の増加を招いた

  3. 就職氷河期世代の経済的不安を高め、結婚率・出生率を低下させた

という一連の流れを考えると、「消費税増税が少子化を加速させた」という主張には 一定の合理性がある と思われます。

現在も消費税の増税議論が続いていますが、もし将来の増税が不可避であるならば、

  • 若年層の正社員化を支援する雇用政策の強化

  • 子育て世帯への税負担軽減(軽減税率の適用など)
    をセットで実施しない限り、少子化はさらに深刻化するでしょう。