弁護士、司法書士、行政書士の業務範囲と非弁行為について
弁護士、司法書士、行政書士の業務範囲と非弁行為について、日本法に基づき詳細に説明します。それぞれの専門職の役割と、非弁行為(非弁護士による法律事務の禁止)に関するポイントを整理して解説します。
1. 弁護士の業務範囲弁護士は、弁護士法に基づき、最も広範な法律事務を行うことができる専門職です。弁護士の独占業務は、法律事務全般に及びます。主な業務内容
- 訴訟・紛争解決:
- 民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟など、あらゆる裁判手続での代理人業務。
- 調停、仲裁、交渉などの紛争解決手続。
- 法律相談:
- 契約、相続、労働問題、企業法務など、あらゆる法律問題に関する相談対応。
- 書類作成:
- 契約書、遺言書、告訴状、内容証明郵便など、法律効果を伴う書類の作成・代理作成。
- 企業法務:
- 会社設立、M&A、コンプライアンス、知的財産権の管理など。
- 刑事弁護:
- 被疑者・被告人の弁護、告訴・告発の支援。
- その他:
- 法律顧問として継続的な法的サポート、行政手続の代理など。
特徴
- 弁護士は法律事務全般を扱うことができ、裁判所での代理権が無制限(簡易裁判所に限らず、すべての裁判所で代理可能)。
- 他の士業と異なり、業務範囲に明確な制限がない。
2. 司法書士の業務範囲司法書士は、司法書士法に基づき、主に登記手続や一部の簡易な法律事務を扱う専門職です。業務範囲は弁護士に比べて限定されています。主な業務内容
- 登記手続:
- 不動産登記(売買、相続、抵当権設定など)。
- 商業登記(会社設立、役員変更、定款変更など)。
- 供託手続:
- 供託金の預け入れや還付手続。
- 簡易裁判所での訴訟代理:
- 訴額が140万円以下の民事訴訟、調停、支払督促などの代理(認定司法書士に限る)。
- ただし、地方裁判所や高等裁判所での代理は不可。
- 書類作成:
- 裁判所や検察庁に提出する書類(訴状、準備書面、破産申立書など)の作成。
- ただし、作成した書類に基づく交渉や代理行為は原則として行えない(認定司法書士を除く)。
- その他:
- 相続手続(遺産分割協議書の作成など)、成年後見業務。
特徴
- 司法書士の業務は主に登記と書類作成に特化。
- 認定司法書士(簡易裁判所訴訟代理等関係業務の研修を修了した者)は、140万円以下の簡易な訴訟で代理が可能。
- 弁護士と異なり、紛争性の高い交渉や複雑な訴訟は扱えない。
3. 行政書士の業務範囲行政書士は、行政書士法に基づき、行政機関に対する許認可申請や書類作成を主な業務とする専門職です。法律事務の範囲はさらに限定されています。主な業務内容
- 行政手続に関する書類作成・提出:
- 許認可申請(建設業許可、飲食店営業許可、風俗営業許可など)。
- 外国人関連手続(在留資格申請、帰化申請など)。
- 自動車関連(車庫証明、車両登録など)。
- 権利義務・事実証明に関する書類作成:
- 契約書(売買契約、賃貸借契約など)、遺言書、離婚協議書、内容証明郵便。
- ただし、作成した書類に基づく交渉や紛争解決は不可。
- その他:
- 会社設立(定款作成、認証手続の代行。ただし登記は司法書士が担当)。
- 市民向けの行政相談やサポート。
特徴
- 行政書士の業務は書類作成と行政機関への提出代行に特化。
- 紛争性のある案件(訴訟や交渉)や、法律相談そのものは原則として扱えない。
- 他の士業と連携することが多く、例えば会社設立では司法書士と、紛争解決では弁護士と協力する場合がある。
4. 非弁行為とは非弁行為とは、弁護士法第72条に違反する行為で、弁護士資格を持たない者が報酬を得る目的で法律事務を行うことを指します。この規定は、国民の権利保護と適正な法務サービスの提供を目的としています。弁護士法第72条の概要
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及びその他の一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
- 対象者: 弁護士資格を持たない個人や法人(司法書士、行政書士を含む)。
- 禁止される行為:
- 報酬を得て法律相談を行う。
- 訴訟や交渉の代理を行う。
- 紛争解決のための和解や仲裁を業として行う。
- 罰則: 違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金(弁護士法第77条)。
非弁行為の具体例
- 司法書士による非弁行為:
- 認定司法書士が140万円を超える訴訟の代理を行う。
- 紛争性の高い交渉(債権回収や離婚交渉)を報酬を得て行う。
- 例: 司法書士が地方裁判所での訴訟代理を無資格で行った場合。
- 行政書士による非弁行為:
- 行政書士が離婚調停の代理や、紛争性のある内容証明郵便の交渉を行う。
- 法律相談を業として行う(例: 「相続問題の解決を全面的にサポート」と広告し、交渉まで行う)。
- 例: 行政書士が債務整理の交渉を債務者に代わって行った場合。
- その他のケース:
- コンサルタントや探偵業者が、報酬を得て契約書作成や紛争解決の交渉を行う。
- 不動産会社が、報酬を得て賃貸借契約の紛争解決を行う。
非弁行為の例外
- 司法書士の特例: 認定司法書士は、140万円以下の簡易裁判所での訴訟代理や調停が認められている(司法書士法第3条)。
- 行政書士の特例: 行政書士は、行政機関への書類提出や、権利義務・事実証明に関する書類作成が認められている。ただし、紛争性がある場合は弁護士に委ねる必要がある。
- 公益性のある活動: 報酬を得ない場合や、公益目的の無料法律相談(例: 法テラスや自治体の無料相談)は非弁行為に該当しない。
5. 各士業の業務範囲の比較
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項目
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弁護士
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司法書士
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行政書士
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|---|---|---|---|
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法律相談
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〇(無制限)
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△(登記関連などに限る)
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×(原則不可)
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訴訟代理
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〇(全裁判所)
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△(140万円以下の簡易裁判所、認定司法書士のみ)
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×
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登記手続
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〇
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〇(主業務)
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×(定款認証代行などは可)
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行政手続
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〇
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△(供託など一部)
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〇(主業務)
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書類作成
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〇(全般)
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〇(登記・裁判書類など)
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〇(行政書類、権利義務書類)
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紛争交渉
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〇
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×(認定司法書士は一部可)
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×
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報酬を得た法律事務
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〇
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△(限定範囲)
|
△(限定範囲)
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6. 非弁行為のリスクと注意点
- 依頼者側のリスク:
- 非弁行為による代理や交渉は法的効力が認められない場合がある。
- 不適切なアドバイスや手続で損害が発生する可能性。
- 例: 行政書士が紛争性の高い離婚協議を代理し、不利な条件で和解が進む。
- 専門職側のリスク:
- 刑事罰(懲役または罰金)。
- 業務停止や資格剥奪などの行政処分。
- 例: 司法書士が無資格で地方裁判所の訴訟代理を行い、懲戒処分を受ける。
- 実務上の注意:
- 司法書士や行政書士は、業務範囲を厳格に守り、紛争性のある案件や複雑な交渉は弁護士に委ねる。
- 依頼者は、資格の有無や業務範囲を確認し、適切な専門家を選ぶ。
- 例: 会社設立では、行政書士が定款作成、司法書士が登記、弁護士が契約交渉を担当する分業が一般的。
7. 実務での連携例
- 会社設立:
- 行政書士: 定款作成、認証手続。
- 司法書士: 商業登記。
- 弁護士: 株主間契約や労務契約の作成・交渉。
- 相続:
- 行政書士: 遺言書や遺産分割協議書の作成。
- 司法書士: 相続登記。
- 弁護士: 相続紛争の調停や訴訟。
- 債務整理:
- 弁護士: 任意整理、破産申立て、訴訟代理。
- 司法書士: 140万円以下の債務整理(認定司法書士)、破産申立書作成。
- 行政書士: 書類作成支援(ただし交渉は不可)。
8. 結論
- 弁護士は法律事務全般を扱うことができ、紛争解決や訴訟代理に強い。
- 司法書士は登記や簡易裁判所での代理に特化し、紛争性のない書類作成も可能。
- 行政書士は行政手続や書類作成に特化し、紛争性のある業務は扱えない。
- 非弁行為は、弁護士以外の者が報酬を得て法律事務を行うことを禁止するもので、違反は刑事罰や懲戒処分の対象となる。
- 各士業は業務範囲を厳守し、必要に応じて相互に連携することで、依頼者の利益を最大化する。

